人間に興味を持った妖精のラーラが現在過去未来と遊びながら、少しづつ人間を理解していきます。
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第二部 夢のまた夢 1.2.
2007年07月19日(木) 10:10

第二部 夢のまた夢








 やめてよ、くすぐったいったら。誰よ、人がいい気持ちで寝てるのに。やだったら、もう‥‥‥

「やあ、元気か?」

 この、すけべじじい、また、やって来たの。

「元気らしいな。うまい酒、持って来たから一杯やろうぜ」

 あたしね、あんた、嫌いなのよ。

「何を言うか、待ってるぞ」

 くすぐったいったら‥‥‥

 まったく、いい気なもんだわ。一升瓶と尺八持ってスタコラ山に登って行くわ。

 あのね、今の爺さん、酔雲っていうの。絵画きさんよ。もう、かなり前から、この上に小屋を建てて住んでるわ。

 陽気がいいとああやってフラフラって、どっかに行っちゃうのよ。今度はどこに行って来たんだか知らないけど、また帰って来たわ。

 面白い爺さんなんだけど、あたし、嫌なのよ。あの爺さんたら、あたしをからかうんだもん。あたしが人間をからかうんならわかるよ。どうして、あたしが人間にからかわれなくちゃならないのよ。あたしと同じで、お酒が好きでね、冗談ばっか言ってんのよ。あたしの方が頭がおかしくなるわ。

 最初の出会いの時から、おかしかったんだから。例のごとく、一升瓶をぶら下げてさ、フラフラと山を登って来たのよ。音痴な変な歌を歌いながら昼間っから酔っ払ってんのよ。

 鳥に声を掛けたり、花としゃべったり、あたし、ここから見ていて、気違いじゃないかって思ったわ。あんな馬鹿にあたしなんか見えるわけないって確信を持ってたわ。案の定、あたしに気がつかないでフラフラっと来て、あたしの隣に尻餅ついたのよ。そして、つまらない俳句なんか作っちゃって、今でも覚えてるわ。

 確かね、「大笑い 風の気まぐれ わしを呼ぶ」だったわ。そして、馬鹿みたいに大笑いして、酒をラッパ飲みすんのよ。それがほんとにうまそうに飲むの。あたしも心の中でね、少しちょうだいよって思ったわ。そしたら、あの爺さん、何したと思う?

 あたしにね、一升瓶から酒をぶっかけたのよ。あたしはもうびしょびしょよ。あの爺さんたら、ニコッとして、あたしを見て、「どうだ、うまいだろう」だって‥‥‥

 畜生、ちゃんとあたしの事、気づいてたのよ。わざと知らんぷりして、酒かけるなんてひどいわ。

 あたしは言ってやったわ。めったにあたし、花の姿のままで人間に話しかける事なんてないのよ。そんな事したら、人間はびっくりしちゃって、この山には悪魔がいるとか言ってさ、誰も来なくなっちゃうもんね。でも、あの爺さんなら大丈夫だろうと思って言っちゃった。

「何すんのよ、この気違い!」てね。そしたら、爺さん、ニコニコして、あたしの花びらの裏をくすぐるのよ。そこ、あたしの一番弱いとこなの。これ内緒よ。そこ、くすぐられるともう、あたし駄目。

「やめてよ、くすぐったいったら、やだったら」とあたしが言ったら、あの爺さんたら余計くすぐるんだから、もう嫌い。

 それから、ずっとよ。あたしに会いに来るといつも、くすぐるんだから、あのすけべじじいが‥‥‥まったく。

 しばらく、いなかったから安心してたのに、また帰って来ちゃった。

 あ〜あ、これから毎日、憂鬱だわ‥‥‥



酔雲爺さん









 酔雲は珍しく絵を描いていた。彼はめったに絵を描かない。特に酒が入らなければ絶対に描かない。どこに行っていたのか知らないが、旅から帰って来て急に絵が描きたくなったのだろう。

 絵を描くといっても彼の場合は酒を飲みながら筆を持って、さっさっさと一気に描いてしまうので、描き始めると何十枚と描いてしまう。自分で気に入った絵が描けると無造作に壁に貼り付けて、うーんと唸りながら眺める。どうでもいいような絵は、そこらに散らかしておく。だから、部屋中に描いた絵が散らかっている。別に片付けようなどとは考えもしない。

 狭い部屋の中には、その散らかっている絵とからの一升瓶と、まだ入っている一升瓶と尺八が二本、寝袋とキャンプ用の炊事セットがあるだけである。

「ごめんなさいまし」と女の声がした。

「どうぞ、あいてますよ」と酔雲は筆を動かしながら言った。

 入口の戸が少しあいて、若い女が顔を出し、部屋の中を覗いた。

「あのう、すみません」と女は酔雲に声を掛けた。

「何じゃ」と酔雲は女の方を見た。

「道に迷ってしまったんですけど、月見村はどちらでしょうか?」

「月見村? ここからじゃ大分かかるぞ。今から行ったら迷子になるだけじゃ。今晩はここに泊まっていきなさい」

「でも‥‥‥」

「いいから、いいから、わしゃ今、退屈しとったんじゃ。さあ、お入りなさい」

「そうですか」と女は戸を開けると静々と中に入って来た。何と、その女は十二単衣を着込んで、うつむき加減に入って来た。

「失礼します」としおらしく言って、しなを作りながら座ると酔雲に微笑んでみせた。

「これは姫様、こんなむさ苦しい所にようこそ、おいで下さいました」と酔雲は言うと、ちゃんと正座して女に頭を下げた。

「いいえ、わたくしはこういうむさ苦しい所が好きでございます」

「生憎とここには姫様のお口に合う物は何もございませんが、今、丁度、ここに南蛮渡来の砂糖がございます。どうぞ、お召し上がって下され」

 酔雲は角砂糖を皿に乗せて、姫の前に差し出した。

「美味ですぞ。どうぞ、召し上がれ」

「はい」と姫は言うが恥ずかしそうにしていて手を出さない。

 酔雲は自分の茶碗に酒を注ぐと一口、うまそうに飲む。

「あの、それは?」と姫は酔雲の飲み物に興味を示した。

「いえ、これはとても姫様のお口に合うような代物ではありません。下賎の飲み物でございます」

「でも、わたくしはとても喉が渇いているのでございます」

「ああ、そうじゃったか。ちょっと待ってて下され」と酔雲は部屋の隅でお茶の用意をする。

「何もわざわざ、そのような事をなさらなくても結構です。その飲み物で構いません」

「いえ、すぐですよ」と酔雲は酒を飲みながら、お湯を沸かしている。

「姫様、また何で、こんな山の中までいらしたんですかな?」

「はい、実は悪い男に追われているのでございます」

「そりゃそうじゃろうな。姫様くらいお綺麗でしたら、どんな男でも追いかけたくなるでしょうな」

「あら、そんな。綺麗だなんて‥‥‥ほんと、わたくし、やだわ‥‥‥ほんとに綺麗?」

「ああ、綺麗じゃよ。絵にも描けない美しさじゃ」と酔雲はまた酒を飲む。

「あの、その下賎な飲み物、おいしそうですね」

「いや、とてもとても姫様のお口には合いません。それより、その南蛮渡来の砂糖、召し上がって下さい。お茶ももうすぐできますから」

「はい」と姫はしょんぼりする。

「もしかしたら、姫様は王昭君と名乗られるお方ではありませんか?」

「はい、実はそうなのです。わたくしは王昭君と呼ばれております」

「やはり、そうですか。それでは姫様ははるか中国からお逃げになっていらしたのでしたか。それは、さぞお疲れになった事でしょう」

「はい、とても疲れています」と姫は疲れ切った顔になる。

「やはり、飛行機に乗って来られたのですか?」

「はい、飛行機で何時間も掛かりました」

「そうでしょう。まだ、お若いのに可哀想に」と酔雲は酒を飲む。

「あの、それを一口‥‥‥」

「いえいえ、とても姫様のお口には‥‥‥はい、お茶が出来ました。粗茶ではございますが、どうぞ」

「はい」と姫は言うがお茶には手を出さない。

「喉が渇いているんでございましょう。さあ、どうぞ。程よい熱さにしておきましたよ」

「はい」と姫は一口、お茶を飲んで顔を歪めた。

「少し苦いでしょうが、そのお茶が一番、疲れを取るんでございますよ」と酔雲は酒を飲む。

「そうですか‥‥‥」

「ところで、姫様を追いかけている男っていうのは、もしかしたら、世之助とかいう男ではありませんか?」と酔雲は酒を飲む。

「世之助だか伊之助だか、そんなもん、あたしゃ知らないわよ」と姫は言った。「もう我慢できないわ」と姫は手を伸ばして、一升瓶をつかむとラッパ飲みする。「あ〜あ、おいしい‥‥‥」

「とうとう、化けの皮をはがしたな、この女ギツネめ!」

「どうして、わかったのよ」と姫に化けていたラーラは言った。

「お前なあ、人間に化けるのはいいが、もっと人間の事を勉強しろ。今時、そんな格好している女がいるか。しかも、山の中で、そんな格好で歩けるわけないじゃろ」

「だって、この格好が一番、綺麗だと思ったんだもん。でも、これ重いわね。よく人間はこんなのを着てられるわね」

「今時、そんなのはいないってんだよ」

「だってさ、綺麗でしょ」

「ああ、綺麗じゃよ。じゃがな、今はもっと綺麗な格好があるんじゃよ」

「ほんと、どんなの? 教えて」

「それはだな」と酔雲は筆を取って、紙切れに女のヌードを描く。「これじゃよ」

「何も着てないじゃない」

「お前は知らんのじゃよ。今、都会に行ってみろ。みんな裸で歩いとる。裸が一番、綺麗なんじゃ」

「馬鹿言わないでよ。いくら、あたしが人間の事をよく知らないったって、そんな事、信じるわけないでしょ」

「そうか、お前は裸が一番、似合うんだけどな」

「この、すけべ爺いが」とラーラは持っていた扇で酔雲の頭をたたいた。

「それじゃあ、これでどうじゃ?」とヌードにビキニを着せる。

「駄目」とラーラは睨む。

「これでも駄目か。残念じゃ。それじゃあ、これでどうじゃ?」と今度はTシャツにミニスカートをはかせる。

「うん、これならいいわ」とラーラは立ち上がって変身しようとする。

「ちょっと待て。一遍に変わったんじゃ面白くない。せっかく、それだけ着込んでるんじゃから、ストリップでもやれよ」

「なに、ストリップって?」

「踊りながら着物を一枚一枚、脱いでいくんじゃよ」

「そんなの、ちっとも面白くないじゃない」

「お前は踊りがうまいじゃろう。それに踊っている時のお前は本当に綺麗だぞ。わしが尺八を吹いてやるから踊ってみろ」

「そう。それほどまで言うなら踊ったげる」とラーラは酒を一口飲んで御機嫌になる。

「さて、やるか」と酔雲は尺八を構える。「色っぽくやれよ」

「任せといて」

 酔雲の尺八に合わせて、しなやかに軽やかに華麗に踊るラーラ。

 一枚脱ぐごとに酒を一杯ひっかけて、だんだん、いい気持ちになり、だんだん、大胆に色っぽくなって行く。

 酔雲もいい気持ちになって、尺八を吹きながらラーラの踊りを楽しんでいる。

「いいぞ、最後の一枚だ。色っぽく脱げ」と酔雲は囃し立てる。

 ニコッとラーラは笑い、最後の一枚を脱ぐと素早く変身、Tシャツとミニスカートになって、「残念でした」と舌を出した。

「何じゃ、つまらん」

「その手に乗るか、このすけべ。でも、この格好、気に入ったわ。軽くて動きやすいもの」

「それも脱げば、もっと軽いんじゃ」

「うるさい‥‥‥さあ、乾杯よ、再会を祝して」

「うむ‥‥‥お前は可愛いのう」

「やだ‥‥‥あまり、おだてないでよ。爺さんだって、わりといい人間だよ」

「その爺さんてのはやめろって言ったろ」

「あっ、そうか、じゃあ、あなた、乾杯よ」

「乾杯!」

「ああ、おいしい‥‥‥ところでさ、さっきのお茶、何あれ?」

「ああ、あれか、わしも知らん。丁度、お茶が切れてたんでな、そこにあった枯れ葉を入れたんじゃよ。大して変わらんじゃろうと思ってな」

「ひどいわね。どんな味がするか、自分で飲んでみてよ。とても飲める代物じゃないわ」

「そうかね。お前の事だから、ぐいっと飲んじまうと思ったんじゃがの」

「ねえ、あなた、もうちょっと、ほんのちょっとでいいから、あたしに優しくしてくれてもいいんじゃないの」

「わしは優しすぎるんじゃよ。お前のお芝居にちゃんと付き合ってやったろうが」

「もう、いいわ‥‥‥ところで、今度はどこ行ってたの?」

「インドじゃ」

「インド? 面白かった?」

「うむ、面白かったぞ。何てったって人間がいい。みんな、いい顔しとる。女なんか、みんな、美人じゃぞ。みんな、サリーっていう派手な服を着ていてな、目がほんとに綺麗なんじゃよ」

「男は? いい男はいた?」

「ああ、男もいいのがいたぞ。クリシュナって名前でな、凄い力持ちなんじゃよ。山を持ち上げたり、悪魔をやっつけたり、怖い物知らずで、笛もうまいし女にはもてる。インドでは人気者で、誰もが彼の事を知っとるよ」

「へえ、そんな男がいるの?」

「お前好みじゃろう」

「うん、会いたいな」

「ラーダーという牛飼いの娘に化ければ、クリシュナに会えるさ」

「あたしも今度、インドに行こう」

「そういえば、インドの音楽もよかったが、お前の横笛が聞きたくなったな。ちょっと一発やってくれ」

「今度はあなた、踊る?」

「わしが踊ってもいいが、お前の友達を呼べよ。その方が面白いじゃろう」

「そうね、最近、彼女たちにも会ってないし、みんな呼んで騒ぎましょうか」

「そうじゃ。酒はみんなで飲んだ方がうまい」

「うん、呼んで来るわ」とラーラは消える。

 しばらくして、ラーラは仲間を連れて来る。フェラとローダとユーナである。三人共、ラーラに影響されてか、ミニスカートをはいている。若い女が四人になって、急にやかましくなったが、酔雲はニコニコして酒を飲んでいる。

 時の流れも忘れはて、五人は酒を酌み交わしていった。


あたしフェラローダユーナ

第二部 夢のまた夢 3.4.5.
2007年07月20日(金) 13:33




 あああああああああ‥‥‥退屈だ‥‥‥

 酔雲爺さん、また、山を下りちゃったわ。寒くなるから、あったかい所に行くんだってさ。まったく、年寄りはやだね。

 毎日、面白かったのにな。

 フェラなんてもう、ずっと、あの爺さんから離れないんだから。あたし、もう、頭に来て、彼女と絶交しちゃった。

 人間嫌いのユーナでさえ、あの爺さんの事、好きになっちゃうんだから、どういうんだろ。

 ローダはローダで、あの爺さんに色目使って挑発するし、すると、爺さんはホイホイとローダの所に行って、すけべごっこをする。するとフェラは大声を出して泣く。あたしはローダと喧嘩する。爺さん、今度はユーナの所に行って楽しそうに酒を飲んでいる。泣いてるフェラも喧嘩してるあたしとローダも馬鹿みたい。

 最初はあたしたち四人で、あの爺さんをからかってやろうと思ったのよ。それが、どこでどう間違えたのか、結局、最後には、あたしたちみんな、あの爺さんに丸め込まれてるんじゃない。まったく、どうなってんだろ。ほんとに、あの爺さん、人間なのかしら?

 あああ、その爺さんもフラッとどっかに行っちゃうし。来る時はちゃんと、あたしに挨拶してくのに、山を下りる時はいつも、あたしの知らないうちに消えちゃうんだから。まるで、お化けみたい。

 フェラなんて、まだ毎日、めそめそ泣いてるわ。ユーナなんか、すっかり人間大好きになっちゃって、毎日、人間をからかって遊んでるのよ。ローダは昔から馬鹿だから、あまり変わりはしないけど、ユーナと一緒になって遊んでるみたい。人間も可哀想ね。あんなローダなんかの相手になったら、精気をみんな吸い取られて骨と皮だけになっちゃうわ。あたしの爺さんをみんなに紹介したのは、今思えば間違ってたのね。

 あああ‥‥‥出るのは溜め息ばかり‥‥‥

 あっ、人間が来たわ。女の子よ。スケッチブックなんか抱えている。もしかしたら、あの爺さんと関係あるのかしら?

 まあ、そんな事、どっちでもいいわ。今は人間と遊ぶ気になんかなれないわ。わりと可愛い娘ね。でも、あたしに気づかないで行っちゃった。

 さてと、昼寝でもしよう。


酔中画2-Y014









 久美子は酔雲の山小屋の前で立ち止まった。

「ごめん下さい」

 返事はない。

 窓から中を覗いてみる。誰も見えない。

 入口を開けようとしたら、簡単に開いた。

 中を覗く久美子。

 描き損じの絵や紙くず、ゴミ、からの一升瓶が散らかっているだけで誰もいない。

 中に入る久美子。

 散らかっている絵を手に取って見つめる。

 次々と熱心に絵を見つめる。



 小屋の中は綺麗に片付いている。

 何枚かの絵を目の前に並べて、久美子はパンをかじっている。

 自分のスケッチブックから一枚の絵を取り出し、目の前の絵と比べてみる。

 久美子の取り出した絵には酔雲とサインがある。どの絵も水墨で風景を描いた物で、筆数少なく単純に描かれてある。どの風景にも小さく人物が描かれてあり、自然の中で、その人物が生きている。

 久美子はパンを食べるのも忘れて、じっと絵を見つめている。


酔中花?









 スケッチブックを抱えた久美子が山道を歩いている。

 道端に咲く小さな綺麗な花を見つけ立ち止まる。

(あら、この娘、あたしに気づいたわ)

 久美子、しゃがみ込んで、その花を観察する。

(どうするつもりかしら? まさか、酔雲爺さんみたいに、あたしをくすぐるんじゃないでしょうね)

 久美子はスケッチブックを開いて、その花をスケッチする。

(あたしを描いてるわ。あたし、気に入ったわ、この娘。この娘と遊ぼう)

 久美子は描き終わると、「可愛い」と言って、花びらを軽く撫でて立ち去った。

(やだ、くすぐったいわ。可愛い顔して、あたしの事、可愛いだって、どうしよう‥‥‥)
第二部 夢のまた夢 6.7.8.
2007年07月21日(土) 12:47




 山の頂上の岩の上に座って、眼下に見える村々をスケッチしている久美子。

 紅葉の山々に囲まれた小さな村。

 田畑で働いている村人たち。

 走り回って遊んでいる子供たち。

 トンビが頭上で輪を描いた。


酔中画3-E009










 回りの景色を眺めながら久美子は歩いている。

 朽ち果てた山寺が見えて来る。

 寺に向かって歩く久美子。

 かなり古い寺らしい。寺の回りを一回りしてみる。草ぼうぼうで、あちこちに石塔のような物が倒れている。小さな山寺に似合わず、彫刻はかなり立派だった。古いので、あちこち破損しているが、それでも正面の龍と虎は大した物だと久美子は感心している。

 足元に注意しながら、久美子は階段を昇り、中を覗いてみる。

 中は薄暗い。目を慣らして、一歩、中に入ろうとした時、「誰じゃ!」と中から声がした。

「キャー」とびっくりして久美子は下に降りた。

「誰じゃ? わしの昼寝の邪魔をするのは」

 薄汚れた着物を着た太った老人がニコニコしながら、片手に一升どっくりをぶら下げて出て来た。ラーラである。ラーラが久美子と遊ぼうと思って、まぬけな仙人に化けている。

 久美子は唖然として老人を見つめている。

「わしに何か用かな?」と老人は言った。

「‥‥‥いえ、あの、あなたは?」

「わしはこの寺の和尚じゃ」

「‥‥‥」

「もっとも、わしがここにいる事なぞ、みんな忘れてしまったようじゃ。ここに人が訪ねて来るなんて何十年振りかのう」

「はっはっは」と笑いながら和尚は座り込んで酒を飲んだ。「あんたも飲むかね?」

「いいえ‥‥‥ほんとに、このお寺に住んでいらっしゃるんですか?」

 久美子は和尚と山寺を比べてみる。いかにも、この山寺にこの和尚ありという感じでおかしかった。

「そうじゃよ。まだ、雨漏りはせんよ。これだって建てた当時は立派な寺だったんじゃ。真っ白なお寺でな‥‥‥おぼこ娘のように、そりゃあ綺麗なもんじゃった。もう何百年も昔の事じゃがの」

「そうですか‥‥‥」

 酒をうまそうに飲み、ゲップをする和尚。

 顔をしかめる久美子。

「あんたはなぜ、こんな山に来たんじゃ?」

「絵の勉強です」

「絵、くだらん」

「酔雲ていう絵画きさん、知りませんか? このちょっと下に住んでるらしいんですけど」

「さあな、人間には興味ないから知らんな」

「そうですか」

「人間は馬鹿じゃよ。いつになっても同じ事ばかりやっている。わしも初めの頃は興味あったが、もう飽きた。くだらんよ」

「和尚さんだって人間でしょ」

「はっはっは、わしゃ仙人じゃ。人間どもが発生する前から、わしはいる。色んな人間を見て来たがくだらんね。つまらん奴ばかりじゃ。最近じゃあ、もう見る気もせん」

「酔っ払い和尚め、馬鹿らしい」と久美子はつぶやく。

 馬鹿の相手はしてられないと久美子は和尚に背を向けた。

「これ、待ちなさい。わしを信じとらんな」

 信じられるわけないでしょと久美子は去ろうとする。

「久美子、これ待て!」

 久美子、立ち止まって振り向く。

「どうして、あたしの名前、知ってんのよ」

「わしゃ、仙人じゃ。何でも知っとる。まあ、ここに来て座れ」

 久美子、戻って来て仙人の前に立つ。

「お前は最近、絵で賞を取った。みんなから褒められ、お前は自惚れていた。そんな時、酔雲の絵を見た。そして、お前はこの山に来た。わしは酒を飲みながら、お前が来るのを待っていたんじゃ」

「どうして、あたしを待っていたんです?」

「気まぐれじゃよ。そんな所に立ってないで、まあ、座んなさい」

 久美子は仙人の顔を不思議そうに見ながら隣に座った。

「酔雲は今、旅の空じゃよ。当分、帰って来んじゃろ。どうするね、帰るかね?」

「いえ、しばらく、いるつもりです」

「そうか。山の中でのんびりするのもいいじゃろう。まあ、一杯いこう」

 仙人はどこからか茶碗を取り出して久美子に渡した。そして、久美子の茶碗と自分のに酒を注ぎ、うまそうに飲んだ。久美子も飲む。

「うまい!」

「そうじゃろ。わしの一番の楽しみじゃ」


一升とっくり










 寝そべって肘枕で酒を飲んでいる仙人。

 あぐらをかいて自分の茶碗に酒を注いでいる久美子。

 御本尊らしい小さな木でできた観音様が笑っている。

「天下泰平じゃのう」

「ねえ、仙人の爺さん、あんた、仙人なら何でもできるんでしょ」

「ああ、できない事はない」

「ならさ、あたし、お爺ちゃんのお父さんに会いたいのよ」

「くだらん。そんな者に会ってどうすんじゃ」

「お爺ちゃんに聞いたんだけど、偉い絵画きさんだったのよ。どんな絵を描いたか知りたいの」

「無駄じゃな」

「あたしは会いたいの」

「会ったってしょうがない」

「お酒、終わっちゃったよ」

「酒ならいくらでもある」

「どこに?」

「そこに」

「これは今、からになったの」

「たっぷり入ってるさ」

「からだってば、ほら」と久美子はとっくりを手に取る。「あら、入ってるわ‥‥‥まるで、魔法使いみたい」

「わしゃ仙人じゃ。わしにもくれ」

 二つの茶碗に酒を注ぐ久美子。

「ねえ、会わせてよ」

「誰に?」

「お爺ちゃんのお父さんよ」

「無駄だ」

「そんな事言って酔っ払う事しかできないんでしょ。嘘つきのくそ坊主」

「うるさいな。それより、お前が本当に会いたいのは恋人だろ? 喧嘩したまま飛び出して来て、それでいいのか? 今、ここに呼んでやるぞ」

「あんな奴、どうでもいいのよ。あんなわからず屋、ほっとけばいいの」

「やせ我慢するな、会いたいくせに。呼んでやるから、たっぷりとちちくり合え。お前が男に抱かれてハーハーヒーヒーやるのを見ながら酒を飲んだら、さぞ、うまいじゃろう」

「黙れ、すけべ爺い」

「何がすけべだ。女が男に抱かれるのは当たり前の事じゃ」

「ふん、この酔っ払いが‥‥‥あたしの願い、聞いてくれなくちゃ、もうお酒やらないよ」

 とっくりを抱えて飲む久美子。

「はっはっは、うるさい奴じゃ。まあ、いいじゃろう。会ったってしょうがないが会わせてやるか。目をつぶって一、二、三て数えてごらん」

「ほんと?」と茶碗の酒を飲み干してから、久美子は目をつぶった。

「一、二、三」
第二部 夢のまた夢 9.10.
2007年07月24日(火) 14:31




 道行く江戸時代の町人たち。

 町人の娘姿の久美子と相変わらず汚い着物を着た仙人が江戸の街中を歩いている。

 久美子はキョロキョロ、辺りを見回している。仙人はニコニコしながら顎髭を撫でている。

 奇妙な二人連れをいぶかし気に見ながら通り過ぎる町人たち。

「ねえ、ちょっと」と久美子は仙人に言う。「これ、江戸時代じゃないの?」

「らしいな」

「あたしのお爺ちゃんのお父さんて明治の生まれよ。おかしいじゃない」

「ちょっと間違ったらしいな。まあ、いいじゃないか。この時代にだって、お前の先祖はちゃんといるよ」

「そりゃあ、いるだろうけど、あたし、絵画きのひいお爺ちゃんに会いたかったのよ」

「そう細かい事を気にすんな。ほれ、あそこに飲み屋がある。ちょっと一杯いこう」

「なに、のんきな事言ってんのよ。戻りましょう。ね、明治時代に」

「まったく、うるさい女じゃな。酒を飲んでからじゃ」

 仙人はスタコラと居酒屋に吸い込まれて行く。

「まったく、飲んべ爺いめ!」

 久美子も仕方なく、縄暖簾をくぐる。


酔中画2-W001






10




 職人風の男、鉄蔵がブツブツ言いながら一人で酒を飲んでいる。

 店の女、鉄蔵の所に酒を持ってくる。

「これでおしまいよ。あんまり飲めないくせにどうしたの、今日は。しっかりしなさいよ、俵屋宗理の名前が泣いてるよ」

「うるせえ! 俵屋なんかくそくらえ! もう、宗理なんてやめだ!」

「凄い荒れてんのね」

「ねえちゃん」と仙人が呼んだ。

 店の女、返事をして仙人の方に行く。

 少し離れた所で仙人と久美子が飲んでいる。

「あと五、六本頼む」と仙人は言った。

「はい、はい」と女は去る。

「ねえ、今、いつ頃なのさ」久美子は仙人に聞いた。

「寛政じゃ」

「寛政って?」

「千八百年頃じゃ」

「ふうん‥‥‥ねえ、この頭、何とかなんない? 重くってしょうがないよ」

「文句言うな。なかなか似合っとるよ。浮世絵から抜け出たようじゃ」

「そうか‥‥‥浮世絵よ。この頃、浮世絵が流行ってたんじゃない。ねえ、見に行きましょう。ねえったら」

「うるせえなア、ちったア落ち着いて飲んだらどうだ」

「だって、このお酒、うまくないもん」

「そりゃそうじゃ。まあ、我慢せい。ところで、あの男、どう思う?」仙人は鉄蔵の方を見て言った。

「何かの職人さんじゃないの」と久美子は言った。「いえ、違うわ。どこか、変わってるわ‥‥‥」

「ああ、ちょっと変人だ‥‥‥お前の先祖じゃ」

「まさか‥‥‥」

「本当じゃ」

 鉄蔵は久美子の存在に気づいて、久美子を見つめた。

 久美子は見つめられて、何となく頭を下げた。

 鉄蔵は席を立って久美子に近づき、久美子をあらゆる角度から見つめながら満足そうにうなづいた。

「何よ、何か用なの?」

 鉄蔵は何も言わず、久美子を見つめている。

「この人、どうしたの?」と久美子は仙人にささやいた。

 仙人は知らん顔で酒を飲んでいる。

 鉄蔵は懐から筆と手帖を取り出して、しきりに久美子を描き始めた。

 久美子、鉄蔵の手帖を覗こうとする。

「動くな」

 久美子、鉄蔵を睨みながら、じっとしている。

 店の女、酒を持って来ながら、鉄蔵の手帖を覗き込む。

「どうやら、いつもの鉄さんに戻ったようね」

 しばらく、鉄蔵の描く絵を見ているが、女は酒を置いて去って行った。

 鉄蔵はあっと言う間に十数枚の絵を描いた。

「駄目だ! ここじゃア描けねえ。悪いが、ねえさん、うちまで来てくれ」

 鉄蔵は強引に久美子の手を引っ張って連れて行こうとする。

「ちょっと待ってよ。ねえ、どうする?」

「行って来い」と仙人は言った。「最初からこうなるように決まってんだ。わしはここで酒を飲んでるよ」

 鉄蔵は久美子を引っ張って連れ去る。

「ねえちゃん、一緒に飲もう」と仙人は店の女に声を掛けた。
第二部 夢のまた夢 11.12.
2007年07月26日(木) 13:09

11




 散らかっている部屋の中で、久美子にポーズを取らせて、絵に熱中している鉄蔵。

 台所では鉄蔵の娘、お辰が夕食の支度をしている。

 久美子はポーズを取りながら、乱雑に壁に貼り付けてある何枚かの絵を見ている。

「ねえ」と久美子は鉄蔵に聞いた。「あなた、有名な絵画きなの?」

 鉄蔵は熱心に筆を運んでいる。かたわらには失敗したらしい久美子を描いた絵が散らかっている。

「俵屋宗理なんて聞いた事もないわ。でも、凄い絵を描くのね」

「駄目だ!」鉄蔵は描いていた絵を横に捨てる。

「どうして、駄目なの? よく描けてるじゃない」

 鉄蔵、新しい紙にまた描き始める。

「父ちゃん、ご飯」とお辰が台所から叫んだ。

 鉄蔵、返事もしないで絵を描いている。

「ご飯だってば!」とお辰は部屋に入って来る。

「うるせえ、後だ!」

「ダメ! 今」

「うるせえ!」

「ご飯!」

「もう少しよ。後にしましょう」と久美子が口を出す。

「駄目よ。そんな事言ったら、夜が明けちゃうわ」とお辰は鉄蔵から筆を取り上げる。

「こら!」

 鉄蔵はお辰から筆を取り返そうとするが、お辰はうまく逃げる。

 鉄蔵、描きかけの絵を丸めて、お辰にぶつける。



 三人はお膳を囲んで夕食を食べている。

「今日ねえ」とお辰が言った。「次郎吉に口説かれちゃった。あたしと一緒になりたいんだってさ」

「ふん。うるせえから、さっさと嫁に行け」

「父ちゃん、一人にして行けるわけないじゃない」

「馬鹿め、俺がおめえなんか小娘の世話になんかなるか」

「だけどね、あたし、あんな女々しい男なんか大嫌いなのよ」

「その次郎吉ってえな、どこのどいつだ?」

「呉服屋の若旦那じゃない」

「あのふやけた野郎か、あれがおめえと一緒になりてえだと。へん、笑わせやがらア」

「あたし、やっぱり、絵をやるわ」

「馬鹿め! 女が絵なんか描いてどうする。さっさと嫁に行け」

「あたし、絵師になるの」

「女なんかに絵が描けるわけねえ」

「あら」と久美子。「女だって絵ぐらい描けるわよ」

「描けねえ」

「描ける」

「そうよ、描けるのよ」とお辰。

「ふん、勝手にしろ!」



 夜、行燈の光の中で、久美子を描いている鉄蔵。

 久美子はあくびをしながら眠いのを我慢している。

 眠っている久美子。

 かたわらで絵を描いている鉄蔵。丁寧に色を塗っている。

 筆を置いて、絵を眺める鉄蔵。

「できた‥‥‥」

 筆を取り、左下に北斎宗理とサインをする。



 窓から朝日が差し込んでいる。

 鉄蔵の絵を挟んで寝ている久美子と鉄蔵。

 久美子、目を覚ます。

 目の前の完成した絵を見つめる。

 絵を手に取って眺める。

「ほくさいしゅうり‥‥‥ほくさいしゅうり‥‥‥かつしかほくさい‥‥‥北斎だ。北斎だわ!」

 絵と鉄蔵を見比べる久美子。そして、回りに貼り付けてある絵も見る。

「間違いない。北斎だ。彼は北斎なんだ」

 久美子、鉄蔵を揺り起こす。

 目を開ける鉄蔵。

「何だ、どうした?」

「あなた、北斎なの?」

「ん?」

「ね、北斎なのね?」

「ああ、今日から北斎だ。俵屋はもうやめた」

 久美子、鉄蔵に抱き着く。

「どうしたんだ?」

「嬉しいの」

「そうか、そうか‥‥‥」

 鉄蔵も久美子を抱き締める。

 障子が開いて、隣の部屋からお辰が眠そうな顔を出す。

「うるさいな。どうしたのよ、朝っぱらから」

「お辰、絵ができたぞ! 俺は今日から北斎だ」

「二人で楽しむのはいいけど、静かにやってよ」とお辰は障子をピシッと閉める。

 まだ抱き合ったままの久美子と鉄蔵。

「お前の名前、聞いてなかったな」

「久美子よ」

「お久美か‥‥‥いい名だ‥‥‥」


北斎







12




 久美子とお辰が台所で食事の支度をしている。

「お姉さん、父ちゃん、気に入った?」

「ええ」

「そう、それじゃア、ずっと、うちにいてね」

「えっ?」

「ちょっと気難しい所もあるけど、いい人だからさ。お姉さんとなら、きっと、うまく行くと思うわ」

「でも‥‥‥」

「あたし、父ちゃんを一人残して出て行くの心配だったの。でも、これで安心だわ」

「えっ、出て行くって?」

「今すぐじゃないのよ。あと一年くらいしたらかな」

「どこ行くの?」

「あたし、好きな人がいるの」

「でも、昨日はお嫁になんか行かないって言ってたじゃない」

「昨日はそう言ったけどね。でも、やっぱり、あたし、お嫁に行くわ」

「そう。相手はどんな人?」

「大工さんなの。まだ半人前なんだけどね。あの人が言うには一人前になるまで待ってくれって‥‥‥でも、腕は確かなの。だから、あと一年くらいしたら一人前になれるわ」

「そう‥‥‥」

「父ちゃんには内緒よ。お嫁に行け行けってうるさいけど、そんな事を言ったら怒るに決まってるもん」

「わかったわ」

「おはようございます」と鉄蔵の弟子、初五郎が入って来た。

「あら、初つぁん、どうしたの? こんな早くから」

「先生は?」

「まだ、寝てるわ。夕べ、徹夜だったから、昼まで起きないんじゃない。一体、どうしたの?」

「いえね。昨日、一枚、絵を買ったんですよ。その絵がね、ちょっと変わってるんでね、昨日一晩中、眺めてたんだけど、俺にはどうもよくわかんねえ。それで先生に見てもらおうと思ってね」

「ねえ、どんな絵、見せて」

 初五郎は手に丸めて持って来た錦絵を広げて見せた。

 その絵を覗き込むお辰と久美子。

「役者絵ね。面白い」とお辰は言った。「でも、音羽屋って、こんな変な顔してた?」

「そうなんだよ。面白えから俺も一枚買ってみたんだ。音羽屋に全然、似てやしねえ。へたくそめ、みんなに見せて笑ってやろうと思ったんだ。ところが、うちに帰って、じっくり眺めてると、やっぱり、これは音羽屋なんだよ。よくわからねえけど、そっくりなんだ。何て言ったらいいかなあ、俺にはわからねえんだけど、やっぱり、これは音羽屋なんだよ」

「そうね、似てないっていえば似てないけど、似てるっていえば似てるわ‥‥‥一体、誰が描いたの?」

「東洲斎写楽って書いてあるだろう」

「聞いた事ないわ」

「うん‥‥‥」

 久美子はじっと写楽の絵を見ている。

「お姉さん、どうしたの?」

「凄いわ‥‥‥」

「そう、凄いんだよ‥‥‥」

 三人、写楽の絵を見つめている。


東洲斎写楽

第二部 夢のまた夢 13.14.15.
2007年07月27日(金) 13:02

13




 縁日である。

 露店を冷やかしながら楽しそうに歩いているお辰と久美子と鉄蔵。

 軽業師が面白おかしく講釈をしながら芸をやっている。

 笑いながら見ているお辰と久美子。

 笑いもせずにじっと観察している鉄蔵。

「父ちゃんたら、また悪い癖出して、今日は絵の事は忘れるんでしょ」

「ああ」と言いながらも鉄蔵は熱心に芸人を見ている。

 真剣な顔の鉄蔵を見ている久美子。

 お辰は楽しそうに笑っている。



 浮世絵を売っている店。

 歌麿の大首絵を見ている久美子。

 鳥文斎栄之の絵を見ているお辰。

 鉄蔵はつまらなそうにそっぽを向いている。

「いつまで、そんなもんを見てんだ。もう行くぞ」

「父ちゃん、写楽の絵があったよ」

「何、どれ」と鉄蔵はお辰が持っている写楽の役者絵を奪い取り、唸りながら見つめる。


喜多川歌麿 扇屋花扇







14




 料亭の座敷で芸者を大勢呼んで酒を飲んでいる鉄蔵と久美子。

 お辰は楽しそうな父を見ながら料理を食べている。

「先生、憎いわね」とお仙という芸者が言った。「最近、ちっとも顔を見せないと思ったら、いつの間にか、こんな綺麗なおかみさんを貰って、わざわざ見せに来るなんて、まったく憎いったらないわ」

「いいのよ、先生」と梅吉という芸者が言った。「おかみさん、まるで、先生の絵から抜け出て来たような人じゃない。先生が惚れるのも無理ないわ」

「違うったら‥‥‥」と鉄蔵は慌てる。

「おかみさん、お一つ」と梅吉は久美子に酌をしようとする。

「ありがとう」と久美子は喜んで受ける。

「お辰ちゃん、いいお母さんができたわね」とお仙は言う。

「ええ、とってもいいお母さんよ」とお辰は笑った。

「お辰! おめえまで何を言ってんだ」

「そうだわ。ねえ、お姉さん、この場で二人の祝言を挙げましょうよ」お辰は梅吉に提案する。

「そりゃ面白いわ。ねえ、みんな、先生の祝言、やりましょう」と梅吉は大賛成。

「馬鹿言うな。何を言ってんだ、お前たち」

「面白そうじゃない、やりましょ」とお仙も言う。

「そうよ、やりましょう」と他の芸者たちも賛成した。



 正面にきちんと座って、かしこまっている鉄蔵と久美子。

 鉄蔵は紋付き袴。

 久美子は白無垢に角隠し。

 芸者たちは着飾って左右に並んでいる。

 三三九度の盃を交わす鉄蔵と久美子。

 おめでとうの声と拍手。

 高砂を唄う太鼓持ち。

 三味線と芸者の踊り。

 楽しそうに酒を飲む鉄蔵。

 しとやかにしている久美子。

 二人の間に座って酒の酌をしているお辰、嬉しそうに二人の顔を見比べている。


開運・翁







15




 秩序よく散らかっている部屋の中。

 壁には写楽の役者絵が貼ってある。

 鉄蔵と久美子の新所帯である。

 文机に向かって内職の春画を描いている久美子。隣の部屋から赤ん坊の泣き声。

 久美子は立ち上がって隣の部屋に行く。



「お栄ちゃん、どうしたの?」と久美子は赤ん坊を抱く。

 すぐに泣きやみ、お栄は何かを言っている。


春画 江戸の絵師四十八人

第二部 夢のまた夢 16.17.
2007年07月28日(土) 17:55

16




 ここは品川宿。

 旅立つ人と見送る人。

 江戸に入って来る旅人。

 忙しく働いている茶屋の女たち。

 鉄蔵は彼らをスケッチしている。

 情景をじっと睨み、素早く筆を運ぶ。描き終えると、違う所に移動して、また対象を見つめ、素早くスケッチする。

 なりふり構わず、木に登ったり地面に寝そべったり、あらゆる所から対象を見てスケッチしている。


南総里見八犬伝 滝沢馬琴の伝奇大作を愉しむ







17




 鉄蔵の家では遊びに来た曲亭馬琴(きょくていばきん)と久美子が話をしている。

「じゃあ、鉄さん、最近は風景ばかり描いてるのかい」

「ええ、朝早く出掛けて、暗くなるまで帰って来ません」

「そうかい。でも、風景が相手じゃ、おかみさんも気が楽だろう。あいつは夢中になると徹底してるからな。美人絵を描いてる時なんかもう、吉原から深川、あちこちの岡場所に毎日入り浸りで、しまいには夜鷹(よたか)を追いかけ回していたよ。あの頃は大変だった。絵の事となるともう見境もねえからな。金もねえのに吉原なんか行って、花魁(おいらん)を追いかけ回してるんだからな。毎日、借金取りと鬼ごっこだよ。しかし、あいつの絵に対する情熱ってえのは大したもんだ。もう気違えだね。ああじゃなきゃ本物じゃあねえんだが、あたしにゃアとても真似できない」

「ええ、ほんと、気違いみたい。でも、やっぱり、凄い人です。あたし、あんなに本気で生きている人、初めて見ました」

「鉄さんは幸せもんだな、あんたみたいな人と一緒になって‥‥‥」

「あら、そんな‥‥‥」

「おおい、お久美〜」と鉄蔵が怒鳴りながら勢いよく帰って来た。

「おい、俺は旅に出るぞ」

「えっ、旅?」

「おう、馬琴、来てたのか。どうだ、最近、景気いいか? えっ、そうか、大した事ねえか。俺は今度、東海道を描くぞ。五十三次、全部描く。おい、お久美、旅の支度だ」

「支度って、今から行くわけじゃないでしょ」

「いや、今から行く」

「まあ、落ち着けよ」と馬琴が口を出す。「今から行ったって日が暮れちまうじゃねえか」

「そんな事、関係あるか‥‥‥おい、お久美、水くれ、喉がからからだ」

 久美子は台所に水を取りに行く。

 鉄蔵は座り込んで、抱えていたスケッチを馬琴に見せる。

「どうだ?」

「うむ、品川宿だな‥‥‥」

「そうだ。あそこは面白え。今日は一日中、あそこにいた。そして、思いついたんだ。東海道五十三次を描くってな。それも単なる風景じゃねえ。人間だよ。宿場宿場で働いてる人や旅人を描いてやる」

 久美子、水を持って来て、鉄蔵に渡す。

 鉄蔵は水を一息に飲み干す。

「面白そうだな」何枚ものスケッチを見ながら馬琴は言った。

「あたしも行くわ」と久美子は言った。

「なに?」

「あたしも東海道、行く」

「馬鹿言うな。女なんか連れて行けるか」

「あたしも行く」

「馬鹿、お栄はどうする?」

「勿論、お栄も一緒よ」

「俺は遊びに行くんじゃねんだぞ」

「だって、あたし、この江戸しか知らないもん。絶対について行くから」

「駄目だ!」

「まあ、いいじゃないか」と馬琴が鉄蔵をたしなめる。「たまには、お久美さんにもいい思いをさせてやれよ」

「おめえは黙ってろ」

「あたしは行く。絶対について行くんだから」

「うるせえ!」

「まあまあ‥‥‥」

 隣の部屋で、お栄が急に泣き出した。

 久美子は鉄蔵を睨みながら、隣の部屋に行った。

「女、子供を連れて、絵なんか描けるか‥‥‥」と鉄蔵はブツブツ言っている。

「大丈夫さ。お久美さんはしっかりしている。お前の邪魔なんかしやしないよ。それよりも、お前、金の方は大丈夫なのか?」

「そうだ、それだよ。ちょっと足りねんだ。お前に借りようと思ってたんだ。頼む」

「やっぱり、来るんじゃなかったな」

「そんな事言うなよ」

 隣から久美子の子守唄が聞こえて来た。

「お久美さんを連れて行くなら貸してやってもいい」と馬琴は言った。

「駄目だ。俺は一人で行く」
第二部 夢のまた夢 18.19.20.
2007年07月29日(日) 12:58

18




 あくる日の早朝。

 旅支度の鉄蔵と久美子。

 お栄は久美子の背中で眠っている。

 鉄蔵は入り口の戸に紙を貼りつけた。

「主人北斎旅行中」と書いてある。

 鉄蔵、むっつりとうなづいてから歩き出す。

 久美子はニコニコしながら鉄蔵の後をついて行く。






19




 再び、ここは品川宿。

 鉄蔵はむっつりしたまま歩いて来る。

 その後ろを久美子と馬琴とお辰夫婦が楽しそうに話をしながら歩いて来る。

「おめえたち、どこまでついて来るんだ?」と鉄蔵が後ろを振り向かずに言った。

「父ちゃん、素直になんなよ」とお辰は言う。「本当は、お姉さんと一緒なんで嬉しいくせに」

「うるせえ、さっさと帰れ」

「それじゃあ、あたしらはこの辺で帰るとするか」と馬琴。

「お栄ちゃん、元気でね、お姉さんも‥‥‥」とお辰。

「おかみさん、体に気をつけてな」と馬琴。

「ええ、皆さんもお元気で‥‥‥」と久美子。

 鉄蔵はさっさと歩いて行く。

「皆さん、ありがとう。それじゃア」と久美子は頭を下げる。

「元気でね」とお辰は手を振る。

 うなづく久美子、鉄蔵の後を追う。

 鉄蔵に追いつき、後ろを振り向く久美子。

 手を振る馬琴とお辰夫婦。

 手を振る久美子。

 久美子の背中でニコニコしているお栄。

 旅立つ親子三人。


東海道を歩く







20




 東海道、神奈川宿。

 絵を描いている鉄蔵。

 楽しそうにはしゃいでいる久美子。

 笑っているお栄。



 東海道、藤沢宿。

 絵を描いている久美子。

 楽しそうにはしゃいでいるお栄。

 笑っている鉄蔵。



 東海道、小田原宿。

 絵を描いているお栄。

 楽しそうにはしゃいでいる鉄蔵。

 笑っている久美子。



 京都を目指して三人の旅は続く。


決定版東海道五十三次ガイド

第二部 夢のまた夢 21.22.
2007年07月31日(火) 17:52

21




 山の中。

 降るような星空。

 酔雲の山小屋から明かりが漏れている。

 虫たちの鳴き声。

 久美子が鼻歌を歌いながら夕食の支度をしている。

「先生、帰って来たんかい」と声がして入口が開き、寅吉爺さんが顔を出した。

 びっくりする久美子。

「あれ」と寅吉爺さんは久美子を見て言った。「あんた、誰だっけ?」

「あの、ええと、あたし、先生の孫なんです」と久美子はとっさに言いつくろう。

「へえ、先生に孫なんていたんかい。へえ、知らなかった」と寅吉爺さんは小屋に入って来た。片手に一升瓶、片手に大きなどんぶりを持っている。どんぶりの中には漬物がたっぷり入っていた。

「わしゃ、てっきり、先生が帰って来たんかと思った。そうか、お孫さんか‥‥‥」

「ええ、久し振りにお爺ちゃんに会いに来たんですけど、いないんです。どこに行ったのか知りませんか?」

「さあな、そりゃ、わしにもわからんの。先生は足が達者じゃけん、どこにでも行きよる」



 漬物をつつきながら、久美子と寅吉爺さんは酒を飲んでいる。

「わしゃ、全然、知らんかった。先生からお孫さんの事なんて全然、聞いた事もなかった。家族の事なんて一度もしゃべらん。わしゃ、一生、独りでおったんじゃろうと思っとった。そうか、お孫さんがいたのか。よかった、よかった」

「お爺さんはいつ頃から、この山にいるんですか?」

「ああ、もう十年近くにもなるじゃろ。あんた、知らなかったのか?」

「ええ、全然、知らなかったんです。もう、ずっと昔、奥さんが亡くなってから行方不明だったんです」

「そうじゃったんか‥‥‥成程な。先生がここに来てから、早いもんで、もう十年にもなる。最初は変わった人じゃと思った。こんな山の中に小屋なんぞ建てて、毎日、山の中を歩き回っていた。たまあに食べ物と酒を買いに村に下りて来るんだが、あまりしゃべらない。こんな小さな村の事だから、すぐ噂になる。みんなして、何やってる人じゃろうと考えたりしたもんだ。そのうち、村の娘たちが面白がって、自分ちで採れた野菜だのを持って、ここに来るようになったんじゃ。娘たちに聞いてみると絵がとてもうまくて、色々な事を知っていて面白いお爺さんだと言っていた。そして、ちょくちょく遊びに行くようになったんじゃ。その娘たちの中に、わしの孫娘がおってな、今ではもう、子供までいるがな、あの時はまだガキじゃったよ。その孫娘の話を色々と聞いているうちに、わしも会いたくなってな。酒をぶら下げて会いに来たんじゃ。娘たちのいう通り、ええ人じゃった。何でも知っとるし、そのくせ、偉ぶった所など全然ない。うむ、ええ人じゃ。絵を描かせたら天下一品じゃ。そんなうまい絵を惜し気もなく、来る人にやってしまう。誰が訪ねて来ても、先生は歓迎してくれた。この村の者はみんな、先生の描いた絵をちゃんと、うちに飾ってるんじゃよ。もう何年も前の事じゃが、街から絵の商人がやって来たんじゃ。どこで、先生の事を聞いたんか知らんが、先生に絵を描いてくれってな。一枚、いくらで買うから何枚か描いてくれって言うんじゃ。先生は一枚、百万出すなら、何枚でも描いてやると言った。しかし、商人はとてもそんな金は払えなかった。先生は百万じゃなきゃ駄目だと言い張って、到頭、一枚も描かなかった。仕方なく、商人は村の連中を片っ端から当たって、絵を買い集めた。金に目がくらんで売ってしまう奴も何人かいた。売ってしまうと、また絵が欲しくなる。すると、そいつは先生にもう一枚、描いてくれと頼んだ。先生はすぐに描いてやった。そいつはまた、その絵を売ってしまう。先生は文句も言わずに、また描いてやった。そんな事が何回かあったが、今はもう、村の連中、誰もが絵を売らなくなったよ‥‥‥村の者はみんな、先生の事を尊敬している。この村の自慢じゃ‥‥‥」


酔中画3-E010







22




 部屋中に書画骨董を並べて整理をしている久美子の祖父。

 久美子が入って来る。

「何してるの?」

「やあ、久美子。お前の絵、賞を取ったんだってな。おめでとう」

「ありがとう。あたし、お爺ちゃんに一番、喜んでもらいたかったの」

「ああ、嬉しいよ」

 祖父は何枚かの水墨画を眺めている。

「それ、お爺ちゃんが描いた絵?」

「ああ」

「ねえ、見せて」と久美子は祖父の隣に座って、祖父から絵を受け取る。

「お爺ちゃん、どうして、絵をやめちゃったの?」

「うむ、色々とあってな」

 久美子は一枚一枚、丁寧に絵を見ていく。そして、一枚の絵に目が止まり、じっと見つめる。

「これも、お爺ちゃんの?」

「どれ、ああ、これはわしじゃない。わしの兄弟子だった人じゃ」

「有名な人?」

「いや、全然、有名じゃない。その人は自分の絵を売ったりしないから、世間の人は全然知らないよ」

「酔雲ていうの、この人?」

「ああ、何よりも酒が好きな人でな。今は山の中で隠遁生活をしてるよ」

「へえ‥‥‥」

 酔雲の絵をしばらく見ているが、次の絵に目を移す久美子。
第二部 夢のまた夢 23.24.
2007年08月05日(日) 19:21

23




「へえ、あんたも絵画きさんかい」と寅吉爺さんは久美子に言った。「わしも先生に習って絵を描いてみたが、全然、駄目じゃ。わしのなんか、みんなの笑いもんじゃ。だが、絵を描くのは楽しいからな、わしは今でも描いとるよ。それと、尺八も先生に教わった。わしは色々と先生に教わっとる。先生のお陰で、わしは毎日、楽しいよ。本当だったら、わしなんか、こんな小さな村のただの百姓じじいじゃ。それが先生のお陰で、何か急に自分が大きくなったように思える。わしゃ幸せじゃよ」

「先生は尺八もおやりになるんですか?」

「ああ。やるなんてもんじゃない。凄いよ。先生の尺八を聞いてると、もう胸がジーンと来るね。専門的な事は何も知らんが、先生は尺八の方だって立派に先生になれる。何というかな、自然の偉大さっちゅうのか、そういうのがジーンと響いて来るんじゃ」

「おじさんもやるんでしょ?」

「わしなんて駄目だ。ただ、音が出るっちゅうだけじゃよ」

「お願い。聞かせて、ね、お願い」

「いや、駄目、駄目」

「尺八、あそこにあるわ。ね、お願い」

「そうか。じゃあ、ちょっとだけな」と寅吉爺さんは壁に立て掛けてある尺八を手に取ると姿勢正しく座り、構える。三回、音を出してから、久美子にうなづき、吹き始めた。



秋のイメージ‥‥‥ 紅葉の山々。虫たちの合唱。稲刈りをする人々。村祭り。


冬のイメージ‥‥‥ 山に降る雪。里に降る雪。夜、雪の中を寒そうに歩く旅人。
村の家々から漏れる暖かそうな灯。


春のイメージ‥‥‥ 小川のほとり、雪を押しのけて咲く春の草花。小鳥たちの競演。
満開の桜の木の下で遊ぶ子供たち。畑で働く人々。
川で遊ぶ魚たち、流れる桜の花びら。


夏のイメージ‥‥‥ 燃える太陽。セミの鳴き声。田植えの終わったたんぼ。
夕立、大雨。
雨あがる。



 寅吉爺さんの尺八の曲、終わる。



 久美子は酔雲の絵を見つめている。

 寅吉爺さんはもういない。


尺八







24




 久美子の家の庭。

 植木いじりをしている祖父。

 久美子がスケッチブックとカバンを抱えて帰って来る。

「お爺ちゃん」

「何だ、久美子か。馬鹿に早いな。もう学校は終わりか?」

「ねえ、この間の酔雲ていう人の絵を見せて」

「どうしたんだ?」

「なぜか、あの絵の事が気になってしょうがないの」

 久美子の顔を見つめる祖父。

「そうか」と言って家に上がる。

 久美子もついて行く。



 祖父は押し入れから、絵を取り出して久美子に渡した。

 久美子は何枚もの絵から酔雲の絵を捜し出して、じっと見つめる。

「お前にも、その絵のよさがわかるようになったか‥‥‥」

「‥‥‥この人、どういう人なの?」

「わしの兄弟子だ。事故で奥さんと子供を亡くしてから、ずっと旅をしていた。旅をしながら絵を描いていた。あの人は日本だけでなく、世界中を絵を描きながら旅をしている。どうやら、最近はやっと落ち着いたらしい」

「今、どこにいるの?」

「山に囲まれた小さな村にいるらしいな」


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