人間に興味を持った妖精のラーラが現在過去未来と遊びながら、少しづつ人間を理解していきます。
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第一部 月影 8.9.
2007年07月02日(月) 18:48




 早朝の都会。

 主役のいないコンクリートの長い廊下。

 新聞配達の兄ちゃんが新聞を投げながら走って行く。

 アパートの二階から、気持ちよさそうに寝ている赤ん坊をおんぶした昭雄が出て来る。

 ひっそりとした繁華街。狭い路地の両側に並ぶゴミ袋の山。

 昭雄は地下鉄の入口に消えて行く。

 電車の中、不器用に赤ん坊にミルクを飲ませている昭雄。

 疲れた顔の人々が無関心に昭雄と赤ん坊を見ている。

 窓から見える田舎の風景。

 昭雄と赤ん坊、山道を歩いている。

 歌を競い合っているヒバリとウグイス。

 カゴを背負った農婦、昭雄とすれ違う。穏やかな顔で頭を下げる。昭雄も真似をする。

 赤ん坊は昭雄の背中ではしゃいでいる。

 空を見上げる昭雄。

 あまりにも空が青すぎる。あまりにも太陽がまぶしすぎる。そして、すべてが、あまりにも自然すぎると思った。


酔中画3-E022









 広い座敷の真ん中で、赤ん坊は大きな布団の中で夢見るように眠っている。

 隣の部屋では昭雄が麗子の父、母、祖母と一緒に食卓を囲んで酒を飲んでいる。

「やっぱり、麗子には都会の空気は合わなかったんだね」と祖母が悲しそうに言った。

「それにしたって、あんなに若いのに死ぬなんて‥‥‥」と母親は涙を拭く。

「都会なんて、人間の住む所じゃねえ」と父親はコップ酒を飲み干した。「まったく、気違えばかりだ」

 昭雄は父親のコップに酒を注いでやる。

「ありがとう。あんたもあんな都会なんかにいないで、ここにいればいい」

「そうですよ」と母親。「静かな田舎にいた方がいい絵が描けるでしょうに」

「ええ、そうですね」と昭雄は言う。

「あなたも色々と疲れたでしょう。しばらく、ここで、のんびりした方がいいですよ」と祖母は言った。

「英雄だって可哀想ですよ。お母さんがいなくなって、そして、今度はお父さんとも離れて暮らさなけりゃならないなんて‥‥‥」母親はハンカチて目を押さえながら、眠っている英雄の方を見ている。

「すみません」と昭雄。「英雄の事、よろしくお願いします」

「あの子だと思って育てますよ‥‥‥心配しないで、死んだ麗子のためにも、いい絵を描いて下さい」
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